最新のスタートアップ関連情報

STARTUP NEWS

Google、Facebook、Airbnbが行うチームビルディングとは【btrax】

企業にとっても最も重要なものは何か?多くの人がビジネスモデルと答える中で、サンフランシスコベイエリアの企業のその多くが、カルチャーに重点を置いている。このことは、オフィスのデザインやワークスタイルにも色濃く反映されている。

参考:成長企業に見るサンフランシスコ風企業カルチャーとは

そんなカルチャー重視の風土のサンフランシスコ市内のオフィスにてbtraxは、日本企業向けに提供している合宿型ワークショップ、イノベーションブースターを通じて、チーム内におけるカルチャーづくり、そしてチームビルディングに関する活動も提供している。

カルチャー作りの第一歩 – チームビルディング

正しい企業風土を作り出す第一歩であるチームビルディングに関する活動は、今や会社のチームを組織する上で重要なイベントとされ、その意義の見直しやより多種多様なチームビルディングイベントの企画が見られるようになった。その変化は特にここ数年でより大きくなっているように感じられる。

日本企業の社内飲み会もチームビルディングの一つ

日本でも近年チームビルディングのあり方が大きく変わったように思う。その存在自体は昨今賛否両論あるものの、皆で囲んで行うような飲み会は社員同士のコミュニケーションを活性化させるのに昔から人気のイベントである。

それにプラスして、「お酒は飲めない」「夜遅くまでいられない」といった飲み会の弱点を補うようにして、現在は山登りやキャンプ等のチームアクティビティが新入社員研修や既存社員の定期研修で行われている。以前よりもより多くの種類のイベントに参加している実感がある人は多いのではないだろうか。

参考:カルチャーショック】日本人スタッフがアメリカの職場で感じた10の企業文化の違い

Googleも試行錯誤したチームビルディング理論

ベイエリアにある企業でもチーム作りに対する見方は過去数年で大きな変化を遂げている。実はベイエリアを代表する大企業Googleも数年前までは「完璧なチームを作るには優秀な人材を揃える」という単純な考えをもとに、「内向的な人は一緒にさせた方がいい」といった迷信めいたものでチームを作っていた。

そのGoogleもついに数年前に社内でチームビルディングに関する研究を本格的に開始。チーム内にいるメンバー個人の能力や特徴よりもチーム全体をまとめるカルチャー作りがより重視されるようになっている。

Googleのチームビルディング調査部隊:Project Aristotleとは

過去20年のビジネスのグローバル化と市場の複雑化により、よりチーム単位で仕事をこなすことが増えたGoogleでは2012年に「最高のチームとは何か」を探る目的として、心理学者、社会学者、統計学者から成る研究チームを編成。それまで従業員個人のパフォーマンスが主に学者の間で研究されてきたが、チームとしてのパフォーマンスが重視されるようになった。

img01
プロジェクト始動時のリーダーAbeer Dubey氏と現プロジェクトリーダーのJulia Rozovsky氏
(写真はre:Work “Watch: Google’s researchers on what makes an effective team”より引用)

結論: 優れたチームのパターン化は不可能

研究チームはまず過去の研究を洗い出し、そこから実際にグーグルにあるチーム同士を比較。学歴、趣味、社交性、男女比、オフィス外での交流頻度まで注目してみたが、「良いチーム」と判断されたチーム間でこれらの共通点・パターンといったものはまったく見つからなかった。

img02_good-google-team

最良のチームの共通点とは?その鍵を握る「集団規範」

そこで次に注目したのが、社会学や心理学で「集団規範 (Group Norms) 」と呼ばれるもの。これはチーム内で共有される、チームとしての行動や判断の規準となるものである。集団規範の例は以下のようなものがある。

  • ・ミーティングは決められた時間ぴったりに開始し終わらせること
  • ・基本的に受身の姿勢はなくす、何か不明点があればすぐに自分で調べるか同僚に聞くこと
  • ・何か問題についてディスカッションを行う際には個人的な感情を持たないこと
  • ・困っているときはお互いに助け合い、チームメンバーが困っている時にすぐ察知できるようになること
  • ・何かを理解する時にはまず”聞く”こと。教えてもらうことに関して否定から入らない

ミーティングスタイルも同様で、雑談から始まり誰が割って入っても構わないミーティングをするようなチームがあれば、議題に沿い話す順番を厳格に守るチームもある。このように明文化されていないながらも共有されている「チームとしての行動規準・判断規準」が集団規範である。

ここで重要なのはこれが全て”規範”であり”規則”ではないという点。カルチャーづくりのポイントは、それが自発的なものであり、強制的なものではないという点である。

参考:イノベーションを生み出す海外企業カルチャー10事例

それぞれのチームで異なるべき行動スターダード

Googleで「良いチーム」と判断されたチームの集団規範は、ミーティング前に週末の予定について雑談するものからリーダーがミーティングを仕切り、話す順番を決めるものまで様々だった。その結果から研究チームは特定の集団規範をすべてのチームに応用するということではなく、それぞれのチームがメンバーを理解して適切な集団規範を設けることが大切だという結論にいたった。

適切な集団規範を持つのはなぜ大切?:個人IQ vs. グループIQ

なぜ正しい集団規範を持っているチームが「良いチーム」となりうるのか。2008年のカーネギーメロン大学の研究によると、正しい集団規範を設けることでそれぞれのチームメンバーの意見が反映され、チームとして質の高い答えを出しやすくなるからである。

この研究では課題に応じてチームごとにベストだと思うアイディアを出す課題を実践。結果、評価が高かったチームの共通点が「チームとしてのアイディアを出すために、メンバーがそれぞれベストだと思うアイディアをそれぞれが犠牲にしたこと」であった。つまり個人の意見よりもチームとしての意見を優先させたチームが優秀な結果を残したのである。

なぜこのようなチームがグループを優先した意思決定をすることができたのか。それはしっかりした集団規範があったからである。誰が割って意見してもいいチームにしろ、話す順番が決められているチームにしろ、チームとしての答えを出すプロセスが集団規範によって定められており、それがメンバー全員に共有されていることでメンバー全員の意見を総合して結論を出すミーティングが可能となる。

メンバー一人の意見を反映したものよりも全員で答えを出したもの方が本当に質の高い結論と言えるのだろうか。研究者たちはこの研究の中で個人的なIQとチームとしてのIQを計測していた。今回個人の意見を犠牲にしてチームとしての意見をメンバー全員が納得できるものにした方がより良いという結果が出たことによって、チームとしてのIQ は個人的なIQよりも高くなると結論づけた。この「チームとしてのIQ」は論文内で「集団的知性」と呼ばれている。

集団的知性の高いチームに共通する2つのポイント

どのようなチームが高い集団的知性を持っているのだろうか。どのようなチームが「良い集団規範を持っている」と言えるのだろうか。実際にその研究で「集団的知性が高い」と判断されたチームに2つの共通点が見つかった。

・メンバー全員に話す機会が均等にある

共通点の一つは話す機会がメンバー全員に等しくあるということ。すべてのタスクでメンバー全員がそれぞれ話すこともあれば、課題によってリーダーシップを取る人が変わることもある。大事なのはその日が終わるまでに全員がほぼ同じぐらい話していること。お互いの意見で刺激しあいながらチームとしての意見を出しやすくなる。

・高い「平均社会的感受性」を有している

共通点のもう一つにあるのが、メンバーが高い平均社会的感受性(Average Social Sensitivity)を持っていること。これは相手の表情、表現、声色や身振り手振りから相手の感情を察する能力のことを指している。このチームほど集団的知性も高くなると考えられている。

他人と自由に話す機会が多くなるほど、他人の気持ちを察する機会は多くなる。メンバーの話せる機会が全員に均等にあるほど、チーム内の平均社会的感受性も自然と高くなる。

参考:デザイン思考を組織イノベーションに活用する10の方法

・あなたは人の気持ちを察することができますか?平均社会的感受性テスト

社会的感受性のテストは比較的簡単にできる。下の写真の人物の目を見て、彼らの感情を当ててみよう。img03reading-the-mind
上の写真はC. 動揺、下の写真はA. からかい、が正解となる。2つとも当てられただろうか。この様な心理テストを例に、相手の表情を通じて感情を察知することができる人々が集まっているチームは全体的な心理的安心感が高まるとされている。

・良いチームを作るのに最も重要な「心理的安心感」とは

メンバー全員に話す機会が均等にあり、そしてメンバーがお互いの気持ちを敏感に察することができる。この2つの要素は結果として「心理的安心感」と呼ばれる、良いチームに不可欠な心理状態をメンバーにもたらしてくれる。

心理的安心感には次のような特徴がある。

  • ・リスクを取るような行動を取っても咎められることがない
  • ・どんなアイディアを出しても恥ずかしい思いをしない
  • ・「理解していないことを悟られないように黙っていよう」といったことがない
  • ・チームの中でも「自分らしく」いられるという自信をくれる

こういった安心感を持つことでチームメンバーは自由な発想をより広げることができ、チームとして最良の決断を予知スムーズに下すこともできる。結果としてチームとしてのアウトプットはより高いものになる。

日本人は比較的に平均社会的感受性の高いチームを作りやすい。しかし、実際にミーティングを行った時に全員が同じぐらい意見を出しているだろうか?逆に意見がよく出るようになった途端、自分の意見を押し出すあまりに相手の感情をあまり考えなくなったりしていないだろうか?心理的安心感をメンバー全員に作り出すことは思うよりも複雑で難しい。

参考:デザイン思考型の企業カルチャーをつくる3つの観点 〜今すぐ喫煙所を廃止しキッチン設置しよう〜

実際に使われているチームビルディングイベント5選

心理的安心感をチーム内で作り出すためにはお互いの信頼を築き上げなければならない。上記のプロジェクトを始めたグーグル及びFacebook、Pixar、Airbnbといった企業が実際にどのようなチームビルディングを具体的にしているのか。筆者がきいてまわった中で特に興味深かった5つの例を紹介する。

1. セーリング – Google等

ゴールデン・ゲート・ブリッジとベイブリッジで有名なサンフランシスコは良い潮風が流れる街として有名であり、ウィンドサーファーからも人気の街である。その風を帆を利用して遊ぶセーリングはサンフランシスコでも特に人気のチームビルディングイベントであり、Google以外にも多くの企業が定期的に利用している。

海賊映画でもよくあるように、メンバーには乗組員として一人ひとり役割が与えられ、それぞれがその役割をこなすことで船体が問題なく思う通りの方向に進むようになる。チーム内のコミュニケーション力、臨機応変に問題に対応できる解決力を養うイベントとしての人気が高い。

img04_sailing

2. ゴーカート – Pixar等

ピクサーがカーズを制作する際に車をより知る目的とチームビルディングを兼ねてゴーカートをした話は知る人には知られている。2人から6人で成るチームでカートの乗り換えなどを工夫しながら合計タイムを他と競うことでグループ内のチームワークを養うことができる。

img05_kart

関連記事:日本のアニメに憧れる社員が語るピクサーの裏側【インタビュー】グラント・アレクサンダー

3. Boda Borg – Airbnb等

これは3-5人でチームを組んで、建物内の各部屋にある「クエスト」と呼ばれるアクティビティをクリアし、ゴールを目指すゲーム。日本でも一時期流行った「脱出ゲーム」のような感覚のアクティビティだが、頭よりもっと体を動かす感覚に近い。

4. インドアゴルフ – Faebook等

日本でも人気が高まりつつあるインドアゴルフはこちらでは人気のチームビルディングアクティビティの一つ。今までお金のかかるスポーツとされてきたゴルフのイメージを変え、手ぶらで行ってもできるスポーツとなってから老若男女多くの人が気軽に遊べるアクティビティになった。

img06_indoorgame

5. The Go Game – Google等

チームビルディングアクティビティの人気の上昇に伴ってできたチームゲームのサービスを提供する企業、The Go Game。アクティビティ当日は社員がファシリテーターとして会場に向かい、ゲームの説明及び指揮をとる。会社としては何も準備せずにイベントを委託できるので非常に頼もしい。ゲームの種類も豊富にあるため、今までとは違う感覚のゲームを楽しめる。

img07_gogame

チームビルディングの最終目的は”精神的な安心感”

チームビルディングは今でも研究が続いているが、何が良いチームを作るのに必要なのかはまだまだ謎が多い。多くの企業で様々なアクティビティが行われ、普段仕事を一緒にする同僚や上司と仕事以外での「非日常」的な空間に抜け出そうとしている。

無作為にイベントを行うのではなく、いつも一緒にいる人の違う一面を知ることで「心理的に安心できる」ようになるという目標を持ってイベントを開催するのが今後の課題であると個人的に思う。

まだまだチームビルディングに懐疑的な人や皆でやるイベントを好ましく思わない人もいるのは事実。そういった人たちにも「このメンバーなら安心して過ごせる」と思ってもらえるようにチームビルディングアクティビティが活かされればと願う。

日本の企業に世界最高のイノベーションメソッドを

イノベーション創出サービスを提供するbtraxでは、イノベーションの最先端を行く本場サンフランシスコ・シリコンバレーにて、デザイン思考や、ユーザー中心デザインなど、新プロダクト・サービス発案のメソッドを通じ新規事業の創出サポートを提供しています。このプログラムはイノベーションを生み出すための人材開発にも貢献します。

海外展開のノウハウ、スタートアップ企業とのネットワーキング等も直接体験をするイノベーションブースターの詳細はこちらからから。資料請求はお気軽にtokyo@btrax.comまでご連絡下さい。

( Kazumasa Ikoma / Design Community Advocate, btrax, Inc.)

btrax (ビートラックス)とは

btraxはサンフランシスコに本社、東京にもオフィスを構えるクリエイティブ・エイジェンシー。これまで多くのアメリカ・国際企業に対してブランドコンサルティングサービス及び日本企業の国際展開とイノベーション創出サポートを提供。お気軽にこちらからお問い合わせ下さい。

またbtraxはデザインをメインにしたコーワーキングスペース、D.Hausを開設致しました。

D.Hausはデザイン的視点から日本企業と地元のスタートアップがコラボレーションを行うことを目的に、2015年10月1日よりサンフランシスコに開設されているオフィススペースです。単なる作業スペースだけではなく、最新情報の提供やメンターシップ、イベントを通じ、ヒトと技術をデザインで繋ぐ事により、イノベーション創出の為のプラットフォームを実現します。こちらには崇城大学も入居しています。

D.Hausのご利用により敷金、礼金、保証金無しでサンフランシスコにオフィスを持つ事が可能です。詳細、資料請求等は公式サイトまで。