サンフランシスコ、
シリコンバレーで活躍する日本人

SUCCESS

ホンダシリコンバレーラボ シニアプログラムディレクター 杉本直樹

衝撃のユーレカモーメントを逃すな

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日本から世界のイノベーション中心地、シリコンバレーに来て長期間ビジネスを展開している日本人はあまり多くはない。しかし、実際にこちらで活躍している方のそのほとんどはかなり”濃い”キャラクターを持ち合わせている。先月、btraxのサンフランシスコオフィスにて開催されたパネルディスカッションに引き続き、今月もかなり豪華なゲストを招いてのイベントを開催。

参考記事:メルカリ, JCB, スタートアップ弁護士に聞く – なぜ日本企業はサンフランシスコ・ベイエリアへを目指すのか【イベントレポート】

今回紹介するのは、下記の三名に加えてbtrax CEOであるBrandonのモデレーションによリ行われた約二時間ほどの対談。その内容の濃さから、以降3回に渡りシリコンバレーで活躍する日本人の方々のスピリットを紹介していく。

今回のパネルディスカッション参加メンバーは:
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  • ホンダ・シリコンバレー・ラボ,シニア・プログラム・ディレクター: 杉本直樹
  • ヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレー, CEO: 西城洋志
  • ChatWork, 代表取締役社長 : 山本敏行

この中でも今回は第一弾としてホンダ・シリコンバレー・ラボ:シニア・プログラム・ディレクターである杉本直樹氏。上記の3人の中では最も長い年月をシリコンバレーで過ごしていることもあり、まさにその風格、オーラはシリコンバレーの”ドン”にふさわしい。

では、そんな杉本氏のHONDA、そしてシリコンバレーに賭ける思いの内容をお届けします。

最初にシリコンバレーに来ようと思った理由は何ですか?

HONDAの杉本です。僕はずいぶん前からここにいて、1994年にシリコンバレーに来ました。なので22年ずっとこちらに住んでます。元々日本で普通に育った日本人で最初はリクルートに入りました。リクルートは当時そこそこ大きかったけど、今の規模から考えるとまだまだ小さかったです。

リクルートで昔情報誌を紙で出してました。でもインターネットが来たら、「紙はなくなるぞ」と感じました。でも周りには「お前はあほかとそんな時代が来るわけがない」と言われた。そこで80年代後半に「本当にインターネットが来るのなら、インターネットで同じようなことをして、リクルートをつぶすぐらいの会社を作れ」と言われて仕事を始めました。

それでウェブを始めて、今のリクルートは完全にそこの部門が大きくなった会社になっている。たまたま社内でやってたから潰れてないんですよリクルートは。ちなみにBrandonは第一次ドットコムバブル期に僕がシリコンバレーで立ち上げたリクルートの子会社でデザイナーとしてバイトしてくれていました。これは日本人向けコミュニティサイトのようなもので、YYPlanet.com (現在はサービス終了)という名前でした。
参考記事:日本がシリコンバレーに100倍の差を付けられている1つの事

新規事業を立ち上げるときに自社のメイン事業ではない事業を行うことはあるのか?

都市部では車を買うことはもはや合理的選択ではない

HONDAは売り上げが自動車が80%くらいで二輪車は15%くらいです。じゃあこれから減っていくのにどうするのとなりますよね。地球の人口は増えていますが、都市部への人口は集中していってます。なので車の必要性っていうのはどんどん減っていってますよね。

僕も普段はHONDA車乗ってますけど、例えば今日みたいな雨も降ってる日に車でSFまで来ると楽勝で1時間半くらいかかる。しかもずっと運転しなきゃいけないとなので「やーめた」となる。シリコンバレーから電車のカルトレインで一時間くらいで来れるしかも座れます。なんで今日は電車できました。しかも自転車持ち込みが可能なんですね。なので駅から遠い人で通っている人はカルトレインに自転車を持ち込める。

減っていくのわかっている、でも日本ではどうするかというアイデアは会社では中々出ないですよね(笑)。現在HONDAは約3000万台ぐらいのエンジンを作っている。車: 500万台 オートバイ: 2000万台 残りは芝刈り機等。つまり世界で一番エンジンを作っている企業なんですね。

そこで以前に本社のお偉いさん達の前でちょっと口を滑らせて言ったのが、「あの皆さんね、HONDAは排気ガスがきれいだとか、エコテクノロジーだとか、かっこいいスローガン掲げてますよね。でも実際我々が作っているエンジンは鉄とかアルミとか加工して作っていますよね。しかも作った車は5%とか10%とかしか使われませんよね。こんなに地球にとって無駄なことをしている会社はない」と。そりゃ顔を真っ赤にしてたおじさまもいましたよ。

しかも残りの95%は駐車スペースを取るだけで、何もせず場所を取るだけで邪魔な存在になっている。で世界の各地ではすでにそれに対して静かに行動が起こっています。現代では都市にいて車を買うということが、すでに合理的な選択ではないという風になっている。

参考記事:変化する自動車に関する5つのユーザー体験

僕の仕事は今のHONDAを変えること

なのでそれをUberが乗り替わろうとしている。Uberは「乗りたいときに乗りたい人を乗せる」というプラットフォームを作った。今までHONDAは全く気づいてなかったけど、UberがHONDAにユーザーの合理的選択の変化を気付かしてくれている。

遅まきながら会社全体がようやく気づいてきて、役員の人もそれに気づきだしてきている。それ以来シリコンバレーに行ってみようとなっている。そして現在ではGoogleとAppleといち早く提携し、彼らのテクノロジーをHONDA車に搭載することにも成功しました。

参考記事:シリコンバレーが自動車業界に与える3つのインパクト

僕は実はこういうことやるの2回目なんですよ。1回目はリクルートを変えた時で、今は「HONDAで必ず変えますよ」ということを言っている。

HONDAはひょっとしたら30年後は車を作ってないかもしれません。僕はそれで全然いいと思っています。上の人はどうやって社員に飯を食わしてやるんだとか言いますけど、国から補助金もらって無理くり赤字垂れ流す会社が生き残っているなんてことがありえるのかと。

そんな会社が生き残るとかありえないですよね。つまり変わっていかなきゃいけない。だから自分のやりたいことをリスクを取ってやるというのが、日本を変えるということになる。じゃあ僕の仕事は何ですかということになると「HODNAを変えることです」といえると思う。

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対談を聞く福岡の参加メンバー達

アメリカと日本の企業で給与に関して違いはありますか?

アメリカでは従業員によって給料が異なる

アメリカに初任給という考え方はないよね。日本だと大学出て、みんな同じ給料から始まる。でもこっちだと一人ずつオファーをもらって、「じゃあこの条件で来てくれませんか」というような交渉になる。だから優秀な人はいっぱいオファーが来るわけですよ。

オファーがいっぱい来るので新卒の人も給料をネゴします。例えば「Googleから年俸1200万円のオファーをいただいてるんですけどおたくはどうですか?」みたいな感じになる。まあ大学生も日本の大学生より勉強してるし、インターンやって社会経験を積んで、できればインターンの会社に就職する。ほんとにアメリカの就職は個人の活動なので考え方が全然違う。

参考記事:シリコンバレーは一攫千金を狙ったドロップアウト達のステージ【対談】大前研一 × Brandon K. Hill

日本語か英語、どちらでサービスを展開した方がいいですか?

シリコンバレーで英語がまともな人は少ない

言語の質問が出るというのは日本のオーディエンスだけだね。海外では日本語でやった方がいいか、英語でやった方がいいかなんて聞く人はいない。だってお客さんは英語喋るでしょ。じゃあ英語に決まってんじゃん。言語というのはユーザーエクスペリエンスの一部であって、一部でしかない。

重要なのは彼らが普段どういう風に情報に接していかというように彼らを理解すること。「本当のお客さんは誰なんですか?」と、お客さんのエクスペリエンスを考えることが重要。そのお客さんのUXを作るために手段を用いることが必要です。

たぶん日本人は英語コンプレックスがすごい強いんだよね。シリコンバレー来て驚くことが、こっちに来たばかりで英語まともに喋れる人なんていないですよ。ものすごいなまってるし、全然何言ってるかわかんない。でもシリコンバレーはわかんないお前がバカなんじゃないの?みたいな目線で来ます。こっちが理解できるまで何回も伝えようとしてくる姿勢がすごいです。

参考記事:シリコンバレーに来るならスーツは着ない事

迷ったりして気持ちが揺れ動くときに大事にしているみたいなことは何かありますか?

わからないときはお客さんに聞け、上司に聞くな

迷ったときに関しては、リクルートとベンチャーキャピタルで学んだことが一つずつあります。まずリクルートで学んだことは、「わからないときはお客さんに聞け上司に聞くな」ということを学んだ。あるいは関係会社に聞いても分からないと言われた。なので徹底的にお客さんに聞くということを学びました。

当時は営業をしていたのでたくさんお客さんに聞くことができました。今はお客さんが2種類いて、シリコンバレーのイノベーターとHONDAがお客さんなので今は彼らに徹底的に聞いている。

参考記事:顧客志向は、なぜ、あえて叫ばれるのか?

木を見て森を見ろ

もうひとつはベンチャーキャピタルから学びました。よく「木を見て森を見ず」っていうじゃないですか。でも「木を見て森を見ろ」という風に言われた。両方見ろと。つまりこれってズームインズームアウトを両方できるようになれという意味なんですよね。

これって非常に難しいんですけど、「これから絶対的に起こることって何だろう。」「お客さんにとって正しいことって何だろう」っていう二つを考えて、そこからブレイクダウンしていくと考えることができるようになる。だから迷ったときはこの両面を見るようにしている。

例えば僕はHONDAは地球にとって最悪の会社だって本当に思っている。でもそういうことって日々の仕事で高度2mくらいのところで仕事をしていると分かんないんですよね。でも高度10,000mくらいまで上がれると、「あーそういうことか」っていうことがわかる。

それで経営者たちっていうのはズームインズームアウトの視点を持っているので言われると「はっ」って気づく。なのでその二点ですね。もしシリコンバレーに来たいのであれば、なぜシリコンバレーに行きたいのかということを考えるべきですね。もし考えて答えが見えないのであれば、来ない方がいいですよ。大変ですから。

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これからくる最新産業トレンドにいち早く気づくポイントは?

”衝撃の瞬間、ユーレカモーメントを見逃さない”

僕がリクルートで働いていた時代は、誰もインターネットなんか知らなくて、名刺にメールアドレスが書いている人すらいなかった。でもたまたまなんかリクルートはスーパーコンピューターを持っていて、僕はそこの営業部隊でした。ある時スーパーコンピューターのエンジニアがカチャカチャしていたんだけど、ある人が「こんなん知ってます?」って言って、見せてきたものに衝撃を受けた。

その人が「アメリカの大学にいるある人のフォルダを開けますよ」って言って、あけたら大量のエロ画像が出てきた。その時に僕はこれははブレイクすると思った。「え、え、え、こんなの見ていいの?」となった。そしたら「これは世界の人に公開しているファイル」ですと。そうか、ならばリクルートのような情報誌のビジネスは不要になるなと気づいた。。

その時の衝撃といったらね忘れられないよね(笑)そういう雷が落ちるような瞬間が大切。これ、英語でいうところのユーレカ モーメントって言うんだけど。そういう瞬間を見逃さないようにする。そしてそれになんで衝撃を受けたのかを深堀することによって、次世代の最新情報を理解することができることがある。

どうすればイノベーティブなアイデアが生まれますか?

点をつなげることでイノベーションは生まれる

よく”Connecting Dot”って言うじゃないですか。全く何も無いところから全く新しいものっていうのはすごい珍しいです。なので誰もつないでみなかった点と点をつないでみるっていうことからすっげえっていうものが生まれることが多いですね。

だからそもそもいろいろな点を持っていることが大切。だからいろいろな人のドットを盗むそれで自分の引き出しに入れておく。それで時々全部ばらまいてつなげてみるということをやってみると「これいけんじゃねえの」みたいなアイデアが生まれる。そのなかの10分の9はしょうもないアイデアなんですけど1個くらいはいいアイデアが生まれます。

次回のシリコンバレーで戦う日本人も乞うご期待

次回は「シリコンバレーで戦う日本人 Part 2」として、大企業内の破壊的イノベーターとしてシリコンバレーに殴り込みをかけているヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレー: CEOの西城洋志氏に関する内容を紹介します。

(執筆・インタビュー Tatsuya Honda / CEO Assistant, btrax, Inc.)

btrax (ビートラックス)とは

btraxは米国サンフランシスコに本社、東京にもオフィスを構えるクリエイティブ・エイジェンシー。これまで多くのアメリカ・国際企業に対してブランドコンサルティングサービス及び日本企業の国際展開とイノベーション創出サポートを提供。こちらからお問い合わせ下さい。

またbtraxはデザインをメインにしたコーワーキングスペース、D.Hausを開設致しました。D.Hausは デザイン的視点から日本企業と地元のスタートアップがコラボレーションを行うことを目的に、2015年10月1日よりサンフランシスコに開設されているオフィススペースです。単なる作業スペースだけではなく、最新情報の提供やメンターシップ、イベントを通じ、ヒトと技術をデザインで繋ぐ事により、イノベーション創出の為のプラットフォームを実現します。こちらには崇城大学も入居しています。
D.Hausのご利用により敷金、礼金、保証金無しでサンフランシスコにオフィスを持つ事が可能です。詳細、資料請求等は公式サイトまで